こんにちは、ユキレドブログへようこそ。
今日も張り切って、トレンドなトピックを追ってみましたのでお楽しみ下さい。
執行役員だった伊藤英氏言
- ドローン・エアモビリティ分野の専門家 伊藤英氏
- ㈱ベイシスコンサルティング、シニアソリューションスペシャリスト。
- 2023年グローバルNo1のドローン企業に選出されたAerodyne Groupの日本法人の元代表取締役社長。
- 日本初SPACでNASDAQ上場を果たしたスタートアップ、A.L.I. Technologiesの元執行役員(ドローン事業統括)。 日本、シンガポール、アメリカでの生活経験と、マレーシアのスタータアップでの勤務経験、NASDAQ上場経験。
- 不名誉ながら「日本初SPACでNASDAQ上場を果たした後に整理解雇された日本初の役員」となってしまいました。
2019年以来、A.L.I. Technologiesとは私が入社する前からの付き合いでした。
当時、経営陣は外資系ヘッジファンド出身者や戦略コンサルタントが中心で、典型的なスタートアップとは一味違った感じがありました。
最初はドローン・エアモビリティ業界で注目を集めていましたね。
2020年初期までは、千葉功太郎氏率いるドローンファンドとA.L.I.がオフィスを共有していたんです。
この千葉氏はPONO2の社外取締役も務めていました。
ところが、SPAC上場後に資本政策で大きな誤算が生じ、その後も市場外での資金調達が必要になり、苦しい状況に。
その対策として、取締役会はアメリカ人投資家たちを迎え入れ、一部の議席を手放す決断をしました。
その後、戦略やビジョンのない会社は、IR活動もないまま、大規模なリストラに踏み切りました。
最終的には、何を目指しているのか、どんな成果を上げたいのかがハッキリしないまま、ついには破産申請に追い込まれてしまいます。
成功の裏には失敗が待っているもあると回想。
一般社員したらSPAC前後で業務でやっていることは何ら変わらないので、経営状態がクリティカルに悪化したことが通知されたのは晴天の霹靂でした。
さらにはその30日後に整理解雇というのは、まったくもって頭も心も整理できなかったのではないかと思います。
それだけにせめて給料未払い問題だけでも早期に解消されることを願っています。という回答でした。
ホバーバイクは実用上未完成製品だった。
たとえそれ(Xturismo)がまだ開発中であっても、準備が整うと約束していました。思うに我社は上場が早すぎたのだと思います。実際、ホバーバイクとはいえ、会社に技師はいてもその分野の専門家がいないのは不思議でした。投資家は「XTURISM」が本物なのか疑問に思ってましたがいつもこのことを聞かれ「この飛行はフルで40分飛んだ撮影です。」とは言いにくかったです。
と、伊藤氏はこの1年半を振り返った。ホバーバイクの開発に関わった元エンジニアからも開発途上の製品だったことを説明。
「XTURISMO」のデザインはカッコ良いのですが、有人で浮上させ走行させると言う意味では非常に不利なデザインです。これは航空関連、自動車関連のエンジニアから見るとそう思います。
設計上、屋外で使用すると横風にさらされ、横転する可能性がありました。
また乗客以外に数人がいてやっと飛行(!?)が可能な代物でした。
同社のパイロットは 1 名のみで、熟練するまでに 6 か月かかっていたそうです。
デモンストレーションでは、パイロットが自ら車両を運転することはなく、場合によっては遠隔操作で車両を制御しました。
「XTURISMO」のデザインはエレガントで印象的ですが、飛行安定性よりもかっこよさを優先したものでした。
さらに言えば、「XTURISMO」が謳う時速80kmで40分飛行するという機体仕様は、実は発売開始された時点では満たされておらず、開発途上の状態であったわけです。
これじゃあSPACがどうのこうのといえる代物じゃありませんね。幼少から自信過剰で育ち小利口な人たちはすべての問題は頭だけ解決できると思っていてたとえ真実でなくても理屈をこねてごまかせると思っているまさにファンドの世界にいそうな人が作った会社でした。
モノづくりチームの未熟
約50人のA.L.I.エンジニアは関東の某研究室で開発に取り組んでいたそう。チームでものを作る環境が整ってもおらず、開発が遅れているところが多かったといいます。
たとえ命令を受けたとしても実行できなかったのも事実。
AERWINS の CTO も務めた三浦一夫氏にインタビューを求めた記事を発見したが返答なしだったそう。
このようなことから、製品が発売日に発表する価値があるかどうかは非常に疑わしいかった製品だったのではと疑いが浮かびます。
もしホバーバイクが公表されている仕様を満たしていなかったとしたら、SPACの是非を問う前に、市場に対して虚偽表示を繰り返したことになります。
先に指摘した通り、まず第一に、技術のバックボーンがあってのSPACではなかったということです。
ALIの虚栄経営受け継いだAERWINSの新経営陣後の苦悩
元エンジニアの従業員は、自動車メーカーエンジニアからA.L.Iのホバーバイクのエンジニアとして転職したが、今年7月に解雇されました。
現在は個人事業主としてエンジニアを続けているといいます。
夢のあるこの企業に賭ける思いで転職したといいます。
A.L.I.の実業も綻びが出始めている。福井県土木部では、「ふくいの空から県民を守るドローン防災事業」という取り組みの一環で、ドローン8台の入札を実施。
本入札ではA.L.Iが2,221万円で落札をしていたが、納品前に同社の資金難が直撃し、納品が未完了になっていたそう。
また、同社が販売していた機体を購入した顧客は、同社から購入後の導入講習が行われないままで、費用も支払い済みのため、今後どのように運用していけばいいのか分からず困惑しているといいます。
A.L.I.のドローン事業はインテグレーターとしてサービスを顧客に提供していた側面が強く、同社のサプライチェーンはドローン業界でも非常に大きいものでした。
今回の同社の経営難はドローン業界全体に波及していると言っても過言ではないものでした。
ドローンビジネススタートアップの苦労
多くの国内ドローンスタートアップが様々な苦労の中、サービスや機体など日夜開発を続けて成長を目指しています。
ドローン市場は農薬散布以外、ほぼゼロから市場形成をしてきました。
ようやく様々な場面でドローン活用の効果がはっきり見え、国の法制度も整いつつある中A.L.I.の事件は起きました。
多くの業界関係者は今回のA.L.I.の顛末は、日本のドローン業界に大きな悪影響を与えたと言います。
ホバーバイクのドローン会社が、日本初の米SPAC上場で大失敗!この大事な時期に何故よりによってドローン業界なのか…と。
この業界は予想以上に市場形成に時間がかかっていて有力な投資筋はドローン業界への投資に消極的になっている最中、更に業界への大きなイメージダウンとなりました。
国内上場を断念し、米SPAC上場を選択し、あまりにも急ぎすぎた合併でした。
そして不完全な製品(!?)、米国親会社とのねじれの構造など多くの要因が今回の悲劇を生み出したと言えます。
複数の元幹部や元従業員に話を聞くと、最後に「実際のところは万策尽きたのが正直なところです」と元経営陣がこぼしたそうです。
いよいよドローン市場が盛り上がり、新たな産業としても大きく飛躍しようとするときに今回の顛末は非常に残念なことでした。
7月にA.L.I.の片野代表取締役辞任後に着任した長島氏も早くも退任し、今は事実上代表取締役が空席のままという異常事態。
親会社が海外で日本側が何の判断も決断も出来ないといいます。
一方的に解雇された従業員達も給与も払われず、また解雇で本来受けられるはずの公的補償も受けられずにいるとのこと。
今回起きてしまったA.L.I.の事案は、成長中のドローン業界に投げかけられた一つの資金石だったのかもしれません。
この轍を踏まぬように業界の成長を願わずにはいられません。
12月27日、(株)A.L.I.Technologies(東京都港区)は東京地裁に破産を申請し1月10日、破産開始決定を受理されました。
現在のトップAERWINS社のKiran Sidhu氏
同社は、Kiran Sidhu氏を会長として取締役会に任命しました。
彼はCatalyst Capital LLCの経営メンバーであり、1999年に設立され、テクノロジー、バイオテクノロジー、および大麻を含む早期段階の企業に投資しています。
彼はHalo Collective(NEO:HALO)のCEOおよび取締役、およびNamaste Technologies Inc.(TSX-V:N)の非執行取締役および監査委員会議長を務めたこともあります。
さらに、彼はTransact Network Ltd.の会長兼CEOでもあり、この企業は後にThe Bancorp, Inc.(NYSE:TBBK)に売却されました。
彼はまた、インドのアウトソーシング企業であるAspen Communicationsのマネージングディレクターを務め、電子商取引の詐欺検出、会計、包括的なシステムサポートなどのさまざまなサービスを提供していました。
現在、彼はAspen Communicationsの非執行取締役を務めています。
彼はBrown Universityでコンピュータサイエンスの学位を取得し、1985年に卒業。
Wharton School of BusinessでMBA(ファイナンス)を取得し、1987年に卒業しました。
AERWINSのCEOであるTaiji Itoh氏は、彼の加入を次のようにコメントしています。
「彼は運用と財務の両面から、特に公共エンティティの観点から、AERWINSに多様で高品質な経験をもたらしています。
私たちは彼が会長として私たちの取締役会を率いてくれることを光栄に思っており、マクロ経済環境のダイナミックな風景を航行する際の彼の貴重な貢献を楽しみにしています。
さあ、創業者経営陣が去ったホントの意味での空箱(SPAC)会社になったこの会社をインド系アメリカ人はどう料理するのか興味は付きません。
引き続き空飛ぶバイク情報を発信していきます。