「マランの栽培・育て方|フィリピン現地生産者の知恵」

今日は、私が紹介してきた自生種のフルーツの中でも最も珍しい「マラン」をご紹介します。
この果物は、ここマニラ首都圏ではほとんど見かけることはなく、私もレイテに滞在していた時に初めて口にして以来、何十年も味わっていません。
マニラからおよそ2,000km離れたミンダナオ島のコタバト州でよく見かけることのできる果物となります。
マランフルーツとは
Artocarpus odoratissimus はクワ科の顕花植物で、フィリピンでは「マラン」と呼ばれています。原産地はボルネオ島、パラワン島、ミンダナオ島で、ジャックフルーツやチェンペダック、パンノキと同じ属に分類されます。
マランは常緑高木で、高さは約25m(約2500cm)に達します。葉は長さ16~50cm、幅11~28cmで、パンノキの葉に似ていますが、葉脈はやや浅めです。多くの木は成熟すると葉脈が目立たなくなります。
フルーツの味
マランの果実は非常に香りが強く、ジャックフルーツやチェンペダックよりも美味だとされます。香りはドリアンに似ていますが、より穏やかで、主に果肉ではなく外皮に強く残ります。外皮の香りは化学的な刺激臭に近いですが、果肉の味はまろやかでジューシー、アノナやロンガンに似た滑らかな食感があります。後味には、外皮に似たわずかな刺激が感じられます。
完熟させるには、樹上でしっかりと熟させる必要があります。熟すと果実は茶色くなり、地面に落ちて簡単に割れるようになります。
生育環境

マランは低地の湿潤熱帯に適し、標高1,000mまで育ちます。年間を通じて降水が均等にある地域で最もよく成長します。水はけのよい深い土壌を好み、若木は半日陰を必要としますが、成長に伴ってより多くの日光を必要とします。
4~6年で結実を始め、1ヘクタールあたり4,000~6,000kgの収量が期待できます。果実は長くしなやかな枝の先端に実り、成熟した果実は重く壊れやすいため、収穫は慎重に行う必要があります。主に、先端に曲がった刃物を取り付けた長い竹の棒を使って手作業で収穫します。果実は落下を防ぐために受け止めるのが理想です。保存期間は非常に短く、1本の木は1シーズンで約180個の果実をつけます。
特徴と分布
マランの木は、ジョヘイオーク、マダン、テラップ、パンノキの近縁種です。Plants for a Future によると、アジアに広く分布しており、ジャックフルーツやパンノキと同様、フィリピンでも重要な作物とされています。
米国農務省によれば、マランの木は主に耐寒性ゾーン10(年間最低気温 -1~6℃)およびゾーン11(4~10℃)で育ちます。これは、フィリピンのような熱帯・亜熱帯気候がマランの生育に適していることを示しています。
果実の特徴と利用
マランの果実は9~10月に成熟し、長さ約30cmの楕円形です。未熟果は野菜として調理可能で、熟した果実は甘く香り高く、栄養価も豊かです。種は茹でたり焼いたりしておやつとして食べられます。
栽培方法:概要
土壌の準備
肥沃で水はけの良い砂質ロームが適しています。
肥料の施肥
・植え付け後、硫酸アンモニウムを200~400g与えます。
・その後、年2回、1本あたり約900g(2ポンド→約907g)を施肥します。
家庭での育て方に必要なもの
園芸用土/有機堆肥/砂/マラン果実/水/小・大サイズの鉢/硫酸アンモニウム肥料
※マランは7℃以下で育ちません。また、風に弱いので防風対策が必要です。
【1. 種や無性伝播(接ぎ木等)】
マランは種子によって増やすことができますが、接ぎ木や挿し木といった無性繁殖も一般的です。
- 種子繁殖は簡便ですが、結果として得られる果実の品質にばらつきが出る可能性があります。また、実を付けるまでに時間がかかる傾向があります(5〜6年程度)。
- 接ぎ木や挿し木による無性繁殖は、親木と同じ品質の果実を得られるため、商業栽培ではこちらが好まれます。接ぎ木の場合、2〜3年で結実が期待できます。
また、マランの種子は発芽率が高く、常温で2〜3週間で発芽することもあります。発芽後の苗木は、初期段階では直射日光を避け、半日陰の環境で管理します。
【2. 発芽適温と育苗の注意点】
発芽適温は**25〜30℃**で、温暖な気候が求められます。
育苗時の注意点:
- 水はけの良い培養土を使う
- 発芽までは水分を切らさない
- 育苗ポットでは根詰まりしやすいため、一定の大きさになったら早めに鉢上げまたは定植する
幼苗の時期は非常にデリケートで、強い日差しや過湿、乾燥に弱いため、簡易なシェードやビニールハウスでの管理が有効です。
【3. 土壌条件と定植】
マランは有機質が豊富で、水はけの良い土壌を好みます。pHは5.5〜7.0が理想的。
定植前に堆肥や完熟たい肥を十分にすき込むと生育が良くなります。
植え付け間隔は、株間5〜7m、列間5〜7mが標準です。これは樹高が大きくなりやすいためで、将来的な枝張りを考慮した設計が必要です。
【4. 肥料と水管理】

- 基肥:定植時に堆肥、窒素・リン酸・カリをバランスよく与えます(例:NPK = 8-8-8)。
- 追肥:生育期や開花前後に液肥または固形肥料を与えると果実の品質向上につながります。
- 水やり:乾燥に弱いため、乾季には週1〜2回の灌水が必要です。ただし、過湿も根腐れの原因となるため注意。
【5. 日照と温度管理】
マランは熱帯性植物のため、高温・多湿の環境を好みます。
- 最適な生育温度:25〜35℃
- 若木の時期は強い直射日光を避ける(遮光率50〜70%のネットを使用)
ただし、寒さに非常に弱く、10℃以下では成長が鈍化、5℃以下では枯れる可能性があるため、日本で育てる場合は温室や加温設備が必要です。
【6. 病害虫】
マランは比較的病害虫に強いとされますが、以下のような注意が必要です:
- うどんこ病:葉に白い粉状のカビ。湿度管理が重要。
- アブラムシ・カイガラムシ:新芽や果実に被害。剪定と定期的な葉面洗浄が効果的。
- 根腐れ病:排水不良が主因。水はけの良い用土と鉢底石の活用で予防。
【7. 開花と結実】
開花は通常、定植後3〜5年で見られます。
- 花の形:淡い黄色〜クリーム色、小さな花が枝先に集まって咲きます。
- 結実率を高めるには、自家受粉だけでなく、人工授粉(筆などで花粉を移す)が有効です。
【8. 収穫と果実の特徴】
果実は開花後、約4〜5か月で成熟します。
- 果実サイズ:長さ20〜30cm、重さ300〜500g前後
- 外皮は黄褐色〜赤褐色になり、やや柔らかくなった頃が収穫の目安
- 香りは甘く、果肉はやや粘質で濃厚な味わいが特徴
収穫は手作業で丁寧に行い、果実を傷つけないよう注意します。
【9. 新鮮なマランの保管方法】
マランは非常に繊細な果実で、収穫後の保存期間が短いため、迅速な処理と流通が求められます。収穫後の果実は、できるだけ早く冷暗所に保管し、直射日光を避ける必要があります。冷蔵保存が可能な場合は、10℃程度の温度で保存すると、鮮度を保ちやすくなります。
果実が傷ついたり過熟になったりすると、風味が落ち、腐敗が早まるため、選別と扱いには細心の注意が必要です。果実の皮が柔らかくなり始めたものは、できるだけ早く消費するか加工用に回します。
【10. 熟成】

マランの熟成には、十分な時間と注意が必要です。果物を24〜27℃で保管し、自然な熟成プロセスを待つか、より均一な熟成を得るためにエチレンガス処理を行います。このプロセスを通じて、最適な香り、甘さ、味、および食味の品質を確保することができます。
しかし現実には、地元の習慣や気候条件に合わせて、マランの栽培者が手間をかけずに自然な熟成プロセスを選択することが一般的です。これにより、地元特有の風味や品質が引き出され、地元の市場で好まれるマランが生産されます。
フィリピンでのマランの栽培は、特に収穫時に注意が必要です。果物を傷つけないように、花柄を切る際には十分な注意が必要です。鋭いナイフや鎌を使用し、手袋を着用して手を保護しながら作業を行います。特に背の高い木からの収穫では、果物を袋に入れて地面に優しく降ろすことで、果物の損傷を最小限に抑えます。収穫は午前中から午後遅くまでに行われ、この時間帯にはラテックスの流れが少なくなり、品質を最大限に保つことができます。
【8. 収穫後の処理】
収穫後、未熟、過熟、または損傷した果物を取り除くことが重要です。残った果物はサイズに応じてグレード分けされ、枝や不要な部分を適切に取り除きます。果物を塩素消毒水で洗浄し、汚れやラテックスのシミを取り除きます。最後に、果物を適切に排水し、余分な湿気を取り除きます。
【9. 新鮮な果物の包装と保存】
グレード分けされた洗浄された果物は、保存用のプラスチック容器や竹かごに詰められます。収穫された熟れた果物は25-35℃で4〜5日間保存できます。また、11-13℃および相対湿度85-95%で、品種と成熟段階に応じて2〜6週間保存が可能です。冷却後に高温に転送する際には、損傷が発生しないように十分な注意が必要です。
【10. 熟成】
マランの熟成は十分な時間と注意を要します。果物を24-27℃で保管し、自然な熟成プロセスを待つか、より均一な熟成を得るためにエチレンガス処理を行います。このプロセスを通じて、最適な香り、甘さ、味、および食べ物の品質を確保ができます。
しかし現実は、地元の習慣や気候条件に合わせて、マランの栽培者が手間をかけずに自然な熟成プロセスを選択することは一般的です。これにより、地元の特有の風味や品質が引き出され、地元の市場で好まれるマランが生産されます。
マランフルーツの驚くべき健康効果

マランフルーツは、クワ科の木になるエキゾチックな果物で、甘くてジューシーな果肉に、ビタミンやミネラル、抗酸化成分がたっぷり含まれています。昔から薬用としても使われてきたほどで、体にうれしい効果がたくさんあります。
ここでは、マランフルーツがもつ代表的な健康効果を、わかりやすくご紹介します。
- がんの予防が期待できる
マランフルーツには、体の細胞を傷つけにくくする成分が含まれており、がんの原因になるような働きを抑えると考えられています。 - 血糖値を安定させる
果物の中でも、マランフルーツは血糖値の急な上昇をゆるやかにする力があります。糖の吸収をおだやかにする食物繊維が多く、血糖コントロールが気になる人にうれしい果物です。 - コレステロール対策に◎
体にたまりすぎるとよくない悪玉コレステロールを減らす成分が含まれており、生活習慣病の予防にもつながります。 - お通じをよくする
豊富な食物繊維と水分が、腸の動きを助けてくれるので、便秘気味の方にもおすすめ。自然なお通じのサポートになります。 - 心臓を守る
血圧を安定させるカリウムなどのミネラルが豊富。血の巡りをスムーズにして、心臓への負担を軽くする働きがあります。 - 貧血予防に役立つ
鉄分や葉酸など、血をつくるのに必要な成分がしっかり含まれています。特に女性にはうれしい効果です。 - 胃腸の調子をととのえる
消化を助けるビタミンやミネラルも豊富で、食べ物をスムーズに吸収するサポートをしてくれます。 - 代謝アップに
体のエネルギーづくりを支えるビタミンB群も入っていて、疲れにくく元気に過ごすのを助けます。 - 目にやさしい
ビタミンAやベータカロテンなど、目の健康を支える成分も多く、パソコンやスマホで疲れがちな目にもうれしい果物です。 - 脳の健康もサポート
血の流れをよくする成分が、脳の働きも活発にしてくれます。集中力や記憶力を保ちたい人にもおすすめです。 - 体の中の炎症をおさえる
体の中で起こる炎症(赤くなったり痛くなったりする反応)をおだやかにする働きもあり、アレルギーや関節の不調が気になる人にもぴったりです。
マランフルーツには、体にうれしい栄養がたっぷり。毎日の食事に少し取り入れるだけでも、体調管理に役立ちます。おいしくて健康にもいい、まさに自然のごほうびのような果物です。
まとめ
私のように海外で暮らす日本人も増えてきました。
特に、南国のトロピカルな地域に住んでいる方には、ぜひ一度マランの栽培を試していただきたいです。
今回の栽培方法は、1ヘクタールを基本としていますが、田舎に住んでいれば土地もたっぷりありますし、裏庭や家の前に植えるだけでも十分楽しめます。そして、実がなって収穫し、それを味わう瞬間はまさに至福のひととき。
ぜひ一度、挑戦してみてください。